検査で「陽性」という結果を受け取った夜は、頭が真っ白になったり、眠れなかったり、涙が止まらなかったりするかもしれません。このコラムは、その揺れるお気持ちのなかで、次の一歩をどう考えていけばよいかを、いっしょに整理するために書きました。
まず「どの検査の陽性か」を確認しましょう
「陽性」という言葉は同じでも、その意味は検査によって大きく異なります。
- NIPT(新型出生前診断)や超音波・コンバインド検査の「陽性」 は、非確定的検査の結果です。「可能性が高い」ことを示すもので、それだけで診断が確定したわけではありません。実際に、NIPT陽性でも確定検査で異常が確認されないことがあります(この確率は年齢や病気によって変わります → NIPTの陽性的中率が年齢で変わる理由)。
- 羊水検査・絨毛検査の「陽性(確定)」 は、染色体を直接調べた確定的検査の結果です。
まずは、ご自身が受け取ったのがどちらの結果なのかを確認してください。非確定的検査の陽性であれば、はっきりさせるための次の検査(確定検査)という段階が残されています(羊水検査・絨毛検査とは)。NIPTが陽性だったときの具体的な流れは、NIPTが陽性だったとき — 結果を受け取ったあとの流れにまとめています。
感情が揺れるのは、自然なことです
不安、悲しみ、怒り、「なぜ自分が」という気持ち、あるいは何も感じられないほどの戸惑い——どんな反応も、大切な赤ちゃんのことを真剣に考えているからこそのものです。間違った感情はありません。
涙が出ること、眠れないこと、食欲がわかないこと。そうした体や心の反応は、大きな知らせを受け取ったときの自然な揺れです。「しっかりしなきゃ」と自分を追い立てなくて大丈夫です。
今夜、大きな決断をしなくていい
結果を知った直後は、気持ちがいちばん揺れている時間です。この夜のうちに結論を出す必要はありません。
出生前検査には次の段階(確定検査や相談)に進むための時間的な猶予があり、あわてて決めなくてもよいように配慮されています。まずは一晩、呼吸を整えることを優先してかまいません。
情報は、少しずつ・信頼できるところから
不安なときほど、スマートフォンで情報を際限なく検索してしまいがちです。しかし、出どころの不確かな情報は、かえって不安を大きくすることがあります。
情報は一度に抱え込まず、
- 検査を受けた医療機関の主治医
- 遺伝カウンセリング(専門の知識をもつ担当者が、中立的な立場で一緒に考えます → 遺伝カウンセリングでわかること)
- NIPTの基幹病院など専門機関
といった信頼できるところから、少しずつ受け取っていくことをおすすめします。
ひとりで抱えないでください
この知らせを、ひとりで抱え込む必要はありません。パートナーやご家族、あるいは医療者に、いまの気持ちを言葉にしてみてください。うまく話せなくても大丈夫です。
もし、パートナーとどう話せばよいか迷うときは、「もし陽性だったら」をパートナーと話し合う前に整理したいことも参考になさってください。
次にできること
気持ちが少し落ち着いたら、次のような選択肢があります。どれを選んでも、また立ち止まってもかまいません。
- 遺伝カウンセリングを受ける:結果の意味、病気のこと、これからの選択肢を、専門職と一緒に整理できます。
- 確定検査に進む:非確定的検査の陽性を、はっきりさせたい場合の選択肢です。
- 専門機関に相談する:NIPTの基幹病院などで、詳しい超音波や専門的な対応を受けられます。
そして、どの道を選ぶかに「正解」はありません。 知って備えることを選ぶ方も、そうでない方も、その決断はどれも尊重されます。
まとめ
- 多くの「陽性」は非確定的検査の結果で、確定した診断ではありません。まず結果の種類を確認しましょう。
- 気持ちが揺れるのは自然なことです。今夜すぐに結論を出さなくてかまいません。
- 情報は信頼できるところから少しずつ。ひとりで抱えず、分かち合ってください。
- 次の一歩(遺伝カウンセリング・確定検査・専門機関)はいつでも選べます。どの選択も尊重されます。
つらいときは、どうか遠慮なく当院にご相談ください。あなたとご家族が、落ち着いて次を考えられるよう、一緒に伴走します。
参考文献
- Rose NC, Kaimal AJ, Dugoff L, Norton ME. Screening for Fetal Chromosomal Abnormalities: ACOG Practice Bulletin, Number 226. Obstetrics & Gynecology. 2020;136(4):e48-e69.
- Dungan JS, Klugman S, Darilek S, et al. Noninvasive Prenatal Screening (NIPS) for Fetal Chromosome Abnormalities in a General-Risk Population: An Evidence-Based Clinical Guideline of the ACMG. Genetics in Medicine. 2023.
本コラムは、出生前診断について理解を深めていただくための一般的な情報提供を目的としています。検査の適応や結果の解釈は、妊娠週数やお一人ひとりの状況によって異なります。具体的なご相談は、外来で医師・専門スタッフへお気軽にお声がけください。
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