妊娠中、赤ちゃんは日々成長し、体のさまざまな部分が異なる時期に発達していきます。そのため、1回の検査だけでは見つけられない病気があります。妊娠初期・中期・後期の3回の超音波検査を受けることで、それぞれの時期に適した観察ができ、赤ちゃんの健康をより確実に見守ることができます。
このコラムでは、なぜ3回の超音波検査が大切なのかを、国内外の研究をもとにやさしくご紹介します。ここでご紹介する検出率などの数字は、研究・文献で報告されている一般的な目安であり、お一人おひとりの結果や当院の成績を示すものではありません。
妊娠初期(11〜14週ごろ)の検査でわかること
この時期は赤ちゃんがまだ小さいですが、重い病気を早い段階で見つけられる大切な時期です。当院では初期ドック(12〜13週)で詳しく確認します。
この時期でも見つかりやすいとされる病気:
- 無脳症(脳が形成されない病気)
- 全前脳胞症(脳の発達の異常)
- 脳瘤(脳が頭蓋骨の外に出てしまう状態)
- 腹壁破裂・臍帯(さいたい)ヘルニア(お腹の壁の異常)
- 巨大膀胱(膀胱が異常に大きくなる状態)
研究では、これらの重い病気の多くが初期の検査でも高い確率で見つかると報告されています。早く見つかることで、今後の妊娠について考える時間や、専門施設への相談・詳しい検査を早めに受ける準備の時間を持つことができます。
初期検査の限界
一方で、腎臓の病気(両側腎無形成など)・心臓の一部の異常・消化管の異常・単独の口唇裂などは、この時期にはまだ見つけにくいことがわかっています。だからこそ、中期以降の検査が欠かせません。
妊娠中期(18〜22週ごろ)の検査でわかること
赤ちゃんが大きくなり、体の細かい部分まで観察できるようになる時期です。最も多くの異常を見つけられる、とても重要な検査で、当院では中期ドック(18〜22週)で全身を系統的に確認します。
この時期に見つかりやすいとされる病気:
- 二分脊椎(背骨の異常)
- 心臓の構造異常(左心低形成症候群・弁の異常・大血管の異常など)
- 口唇口蓋裂
- 消化管の異常
- 腎臓・尿路の異常(両側腎無形成・水腎症・尿路拡張など)
- 先天性肺気道奇形、内反足 など
研究では、初期と中期の検査を組み合わせることで、全体の約8割ほどの構造異常を妊娠24週までに見つけられると報告されています。これは中期の検査だけを受けた場合(およそ半分程度)と比べて、大きく高い割合です。中期だけでは、初期に見つかるはずだった重い異常の発見が遅れ、対応の選択肢がせまくなってしまうことがあります。
「ソフトマーカー」について
中期の検査では、ソフトマーカーと呼ばれる所見が見つかることがあります。これはそれ自体が病気ではありませんが、染色体の異常などのサインになりうる所見です。
- 心内エコー輝点(心臓の中の明るい点)/高輝度腸管(腸が明るく見える)
- 脈絡叢嚢胞(脳の中の小さな水たまり)/単一臍帯動脈(へその緒の血管が少ない)
- 上腕骨・大腿骨の短縮/項部(首の後ろ)の皮膚の厚み
こうした所見が見つかったときは、追加の検査をご案内することがあります。首のむくみ(NT)についてはNTとは?もあわせてご覧ください。
妊娠後期(妊娠後半)の検査でわかること
赤ちゃんがさらに成長し、妊娠の経過のなかで新しく現れる異常や、これまで見つからなかった異常を見つけられる時期です。当院では心臓・後期ドックで確認します。
この時期に初めて見つかることが多いとされる病気:
- 卵巣嚢腫/水腎症(腎臓の腫れ)
- 軟骨無形成症(骨の成長に関わる病気)/小頭症
- 軽度の脳室拡大/心室中隔欠損(心臓の壁の穴)
研究では、妊娠後期の検査を受けた妊婦さんのおよそ130人に1人(約0.8%)で、それまでの検査では見つからなかった新しい異常が見つかったと報告されています。出産前に知っておくことで、設備の整った施設での出産や、生まれてすぐの治療の準備ができます。
3回の検査を受けるメリット
- 見逃しを減らせる — 1回の検査で見つかる異常には限りがありますが、時期を分けて3回受けることで発見の機会が増えます。
- 早く分かるほど、考える時間ができる — 妊娠の経過について考える時間、専門医に相談する時間、必要な検査を受ける時間に余裕が生まれます。
- 出産の準備ができる — 赤ちゃんの状態に応じて、適した施設での出産や、生まれてすぐの治療の準備ができます。
- 安心につながる — 各時期に適切な検査を受けることで、赤ちゃんの成長を確認しながら妊娠生活を送れます。
心臓については、初期からの評価が特に役立つ場合があります。詳しくは胎児の心臓スクリーニング、中期の全身評価は中期の形態スクリーニングもご覧ください。初期ドックの時期を過ぎた方には早期ドック(14〜17週)もご案内しています。
大切なこと
超音波検査はとても有用な検査ですが、すべての病気を見つけられるわけではありません。口蓋裂(単独)・指の形の異常・肛門閉鎖・小さな心房中隔欠損・食道閉鎖などは、超音波では見つけにくく、生まれてから分かることもあります。
それでも、時期の異なる3回の検査を受けることで、見逃しを最小限にし、赤ちゃんとお母さんにとって最善の準備をすることができます。ご不明な点やご心配なことがあれば、遠慮なく外来で医師・専門スタッフにご相談ください。
費用について
3回の検査にはそれぞれ費用がかかりますが、各時期の検査には異なる目的と意義があります。具体的な料金は料金ページをご覧ください。
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本コラムは、出生前診断について理解を深めていただくための一般的な情報提供を目的としています。検査の適応や結果の解釈は、妊娠週数やお一人ひとりの状況によって異なります。具体的なご相談は、外来で医師・専門スタッフへお気軽にお声がけください。