赤ちゃんの先天的な病気のなかで、最も頻度が高いのは心臓の病気です。だからこそ当院では、中期ドックで心臓を含めた全身を診たあとも、妊娠後期にもう一度、心臓を専門的に確認する機会を大切にしています。このコラムでは、なぜ後期にもう一度「心臓」を診るのか、その理由を整理します。
心臓・後期ドックとは
心臓・後期ドックは、妊娠26〜28週ごろに行う、心臓を中心とした専門的な超音波検査です。赤ちゃんが大きくなり、臓器がより発達したこの時期に、心臓の構造と血流を、もう一度詳しく確認することを目的とします(心臓・後期ドックのご案内)。
なぜ、後期にもう一度「心臓」を診るのか
1. 心臓は、最も頻度の高い先天性の病気
先天性の病気のなかで、心臓の病気は最も多く、およそ1,000人に8〜10人にみられます(生後1年以内に手術が必要となる重症例は約300人に1人)。頻度が高いからこそ、時期を変えて繰り返し確認しておく意味があります。
2. 週数が進むと、心臓はより詳しく見える
心臓は、週数が進むほど部屋や弁、血管のつながりや血流を詳しく評価しやすくなります。初期や中期では小さくて見えにくかった所見が、後期にはより明確に評価できることがあります。
3. 経過のなかで「現れてくる」心臓の変化がある
心臓の所見のなかには、妊娠の経過とともに時間をかけて現れてくるものがあります。初期・中期で問題がなくても、後期に確認できる変化があるため、時期をずらして診ることに意味があります。
生まれる前に分かっていることの意味
心臓の病気のなかには、生まれた直後から、血液の流れを保つための対応がすぐに必要になるものがあります。こうした病気を生まれる前に把握できていれば、小児循環器や新生児の治療体制が整った施設で、計画的に出産に臨むことができます。生まれてすぐに必要な治療を始められるかどうかは、その後を大きく左右します。
胎児の心臓は、専門的な知識と経験がなければ評価が難しい領域です。当院では、胎児心エコー認証医が、心臓を中心に丁寧に評価しています(胎児の心臓スクリーニング)。
当院の考え方
当院では、心臓・後期ドックを、赤ちゃんの安全を守るための大切な診療のひとつと考えています。中期までの検査で順調に経過している場合でも、最も頻度の高い心臓の病気を、生まれる前にできるかぎり確認しておきたい——それが、この時期にもう一度心臓を診る理由です。
これまでの経過やご家族の状況によって、重点的に診ておきたい点は一人ひとり異なります。どのように確認していくのがよいか、これまでの初期ドック・中期超音波の結果もふまえて、一緒に整理します。どうぞお気軽にご相談ください。
まとめ
- 赤ちゃんの先天的な病気のなかで、最も頻度が高いのは心臓の病気です。
- 心臓・後期ドックは、赤ちゃんが大きくなった26〜28週ごろに、心臓を中心にもう一度詳しく診る検査です。
- 週数が進むほど心臓は詳しく見え、経過のなかで現れてくる変化も確認できます。
- 生まれた直後に対応が必要な心臓病を前もって把握できれば、分娩施設の準備につながります。
参考文献
- Carvalho JS, Axt-Fliedner R, Chaoui R, et al. ISUOG Practice Guidelines (Updated): Fetal Cardiac Screening. Ultrasound in Obstetrics & Gynecology. 2023;61(6):788-803.
- Donofrio MT, Moon-Grady AJ, Hornberger LK, et al. Diagnosis and Treatment of Fetal Cardiac Disease: A Scientific Statement From the American Heart Association. Circulation. 2014;129(21):2183-2242.
本コラムは、出生前診断について理解を深めていただくための一般的な情報提供を目的としています。検査の適応や結果の解釈は、妊娠週数やお一人ひとりの状況によって異なります。具体的なご相談は、外来で医師・専門スタッフへお気軽にお声がけください。
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