NIPT TIMING
NIPTを受けるタイミング
「妊娠 6週から」という情報の前に
NIPT(新型出生前診断)は、妊婦さんの血液から赤ちゃんの染色体の状態を調べるスクリーニング検査です。最近は「妊娠 6週から検査可能」という案内を見かけることがありますが、適切な検査時期を正しく理解しておくことが、安心につながります。このページでは、推奨される時期とその理由を専門医の立場から整理します。
推奨される検査時期
国際的な医学会(アメリカ臨床遺伝・ゲノム学会(ACMG)、国際出生前診断学会(ISPD)など)は、NIPTを妊娠 9〜10週以降に実施することを推奨しています。日本では、出生前検査認証制度等運営委員会が妊娠 9週より前の時期にNIPTを行わないよう求めています。当クリニックでは、妊娠 10週からの実施としています。
推奨される理由は、検査の精度に関わる fetal fraction(母体血液中に含まれる主に胎盤由来のDNAの割合) にあります。妊娠週数が早いほどfetal fractionは少なく、週数とともに上昇し、10週以降で安定します。実際の研究(2026年)でも、妊娠 6〜9週時点でのfetal fractionの中央値は約9%にとどまり、10週以降で十分に上昇すると報告されています。fetal fractionが少ない時期に検査すると、結果の信頼性が下がったり、結果が出ない(判定保留)が起きやすくなります。
妊娠早期(10週未満)の検査について
近年、特殊な技術(fetal fractionを増幅・濃縮する方法)を使って、妊娠 6〜9週でも検査を行う研究が進んでいます。これらの研究では、早期でも一定の精度が得られる可能性が示されつつありますが、現時点では次の点に注意が必要です。
- 妊娠 6〜9週での染色体異常の検出に関するデータは、まだ十分に蓄積されていません。
- 標準的な検査では、早い時期ほどfetal fractionが少なく、判定保留になりやすい傾向があります。
このため、早期の検査は研究段階の側面が大きく、確立された標準は妊娠10週以降の検査です。
胎児DNA濃度(fetal fraction)と検査精度について
NIPTは、お母さんの血液中に含まれる赤ちゃん由来のDNA断片を調べる検査です。この検査の精度は、血液中の赤ちゃん由来のDNAの濃度(胎児DNA濃度。専門用語で「fetal fraction」といいます)によって大きく変わります。
胎児DNA濃度とは
お母さんの血液中には、お母さん自身のDNAと、胎盤から放出される赤ちゃん由来のDNAが混ざって流れています。胎児DNA濃度とは、血液中のDNA全体のうち赤ちゃん由来のDNAが占める割合のことで、パーセント(%)で表されます。
濃度が高いほど精度が高くなります
胎児DNA濃度が高いほど、検査の精度は高くなります。赤ちゃん由来のDNAが多いほど、正常な場合と染色体異常がある場合の違いをはっきりと見分けられるためです。逆に濃度が低いと、赤ちゃん由来のDNAがお母さんのDNAの中に埋もれてしまい、染色体異常があっても見つけにくくなります。
多くの検査機関では、信頼できる結果を出すために胎児DNA濃度が 2〜4%以上 必要としています(基準値は検査方法によって異なります)。濃度が低すぎると、結果が出せない「判定保留」となることがあります。
濃度別の検出率の目安
研究によると、胎児DNA濃度とダウン症候群(21トリソミー)の検出率には、おおよそ次のような関係が報告されています。
- 胎児DNA濃度 4%:検出率 約62%
- 胎児DNA濃度 5%以上:一部の検査方法では検出率が100%に達します
- 胎児DNA濃度 8%以上:検出率はほぼ100%
胎児DNA濃度が十分に高い場合、NIPTのダウン症候群に対する検出率は99.7%、偽陽性率(誤って陽性と判定される確率)は0.1%以下という非常に高い精度を示します。
胎児DNA濃度に影響する要因
- 妊娠週数:妊娠が進むにつれて濃度は上がります(妊娠10週未満は濃度が低く、結果が出にくいことがあります)
- お母さんの体重:体重が重いほど濃度は低くなる傾向があります
- 体外受精による妊娠:濃度が低くなることがあります
- 染色体異常の種類:18トリソミー・13トリソミーでは濃度が低くなる傾向があります
胎児DNA濃度が低すぎて結果が出ない(判定保留となる)ことは、全体の約1〜8%の方に起こるとされています。
まとめ
NIPTは、胎児DNA濃度が十分に高ければ非常に高い精度で染色体異常を検出できますが、濃度が低い場合は精度が下がったり、結果が出なかったりすることがあります。だからこそ、妊娠週数や体重などの条件を考え、適切な時期に検査を受けることが大切です。胎児DNA濃度や検査結果について不明な点がありましたら、いつでもご相談ください。
NIPTで判定保留となった場合の対応について
検査結果が出ない「判定保留」となった場合は、再検査や次の検査の検討が必要になります。判定保留はご本人に問題があるわけではなく、検査の性質上、どなたにも起こりうるものです。
判定保留となる理由
NIPTは、お母さんの血液中に含まれる赤ちゃん由来のDNA断片を調べる検査です。判定保留となる主な理由は、血液中の赤ちゃん由来のDNA量(fetal fraction)が少なすぎて、正確な判定ができないことです。
判定保留となる原因には、以下のようなものがあります。
- 妊娠週数がまだ早い
- お母さんの体重が重い
- 特定のお薬を使用している
- その他の母体の状態
再検査について
時期をおいて再検査を行うと、約75〜80%の方は結果が出ます。しかし、残りの20〜25%の方は再び判定保留となる可能性があります。
なぜ染色体検査が推奨されるのか
判定保留となった場合に染色体検査(羊水検査など)が推奨される理由は、主に次の3つです。
- 染色体異常のリスクが高くなっている
研究によると、NIPTで判定保留となった妊娠では、ダウン症候群(21トリソミー)・18トリソミー・13トリソミーなどの染色体異常が見つかる確率が、通常の妊娠に比べて高くなることが報告されています。判定保留となった方のうち染色体検査を受けた方の約6〜19%に染色体異常が見つかったという報告もあります。 - 確実な診断が得られる
再検査を行っても、また判定保留となる可能性があります。一方、羊水検査などの染色体検査は赤ちゃんの染色体を直接調べるため、確実な診断が得られます。 - 時間を有効に使える
再検査を繰り返すと、結果が出るまでに時間がかかります。妊娠週数が進むと、もし異常が見つかった場合の選択肢が限られてくることがあります。染色体検査を選ぶことで、より早く確実な情報を得ることができます。
選択肢について
判定保留となった場合、以下のような選択肢があります。
- 染色体検査(羊水検査など)を受ける:確実な診断が得られます。
- 再検査を受ける:約75〜80%の確率で結果が出ます。
- 超音波検査を詳しく行う:赤ちゃんの状態を確認します。
- 他の検査方法を検討する:母体血清マーカー検査など。
どの選択肢を選ぶかは、妊娠週数・ご本人の希望・超音波検査の結果などを総合的に考えて決めていきます。
大切なこと
判定保留となったからといって、必ずしも赤ちゃんに異常があるわけではありません。しかし通常よりもリスクが高くなっているため、専門医による遺伝カウンセリングを受けて、ご自身に合った選択をすることが大切です。当クリニックでは、判定保留となった場合に基幹施設と連携し、こうしたご相談に対応しています。
「早く知りたい」という気持ちと向き合う
妊娠がわかったら、赤ちゃんの状態をできるだけ早く知りたいと思うのは、自然な気持ちです。妊娠10週までの間にも、できることがあります。
- 産科の超音波検査で、赤ちゃんの発育と心拍を確認できます。
- 葉酸の摂取など、妊娠初期に大切なことを医師に相談できます。
- NIPTがどういう検査かを十分に理解し、受けるかどうかをじっくり考える時間が持てます。
- 検査を受ける施設についての情報を集めることもできます。
週数を待つことは、ただ待つだけの時間ではなく、納得して検査に臨むための準備の時間にもなります。
受診できるタイミングを調べる
ご自身の妊娠週数・出産予定日から、検査と受診可能なタイミングを確認できます。詳しくは受診タイミングの確認ページ(/calculator/)をご利用ください。
施設選びと「結果の受け止め方」について
「どの施設で受けるか」「陽性・陰性それぞれが何を意味するか」は、時期と同じくらい大切です。これらは別ページで詳しく解説しています。
- 認証施設と無認証施設の違い・施設選びのポイント ▶ NIPTの施設選び
- 陽性・陰性の意味、陽性的中率の考え方 ▶ NIPTの検査結果の見方
NIPTはスクリーニング検査です。陰性でも100%の保証ではなく、陽性でも確定診断ではありません。陽性の場合は確定検査が必要になります。検査を受けるかどうか、いつ受けるかは、ご自身とご家族でよく話し合って決めていただきます。
よくあるご質問
QNIPTは妊娠何週から受けられますか?
当クリニックでは妊娠10週からの実施としています。国際的にも妊娠9〜10週以降が推奨されています。
Q「妊娠6週から可能」という広告を見ましたが、受けて大丈夫ですか?
妊娠6〜9週での検査は研究段階の側面が大きく、染色体異常の検出に関するデータはまだ十分に蓄積されていません。確立された標準は妊娠10週以降の検査です。
Q早い時期に受けると何かデメリットはありますか?
赤ちゃん由来のDNA(fetal fraction)が少なく、結果が出ない(判定保留)になりやすくなります。判定保留の場合は再検査が必要です。
参考文献
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