NIPT(新型出生前診断)で「陰性」という結果が出ると、「赤ちゃんは大丈夫」と思われるかもしれません。確かに、NIPTは21トリソミー(ダウン症候群)・18トリソミー・13トリソミーという3つの染色体の病気を見つけるのにとても優れた検査です。
しかし、NIPTが陰性でも、すべての赤ちゃんの異常がわかるわけではありません。
赤ちゃんの異常と染色体異常の関係
実は、生まれてくる赤ちゃんに何らかの異常が見つかった場合、その原因が染色体異常であることは全体の約15%程度にすぎません。つまり、残りの約85%は、染色体異常以外の原因によるものなのです。
さらに、NIPTで調べられるのは、その染色体異常の中でも主に3つのトリソミー(21・18・13)だけです。それ以外の多くの病気や異常は、NIPTでは見つけることができません(NIPTが3疾患に限られる理由・拡大NIPTの限界)。
NIPTでは見つけられない異常とは
NIPTが陰性でも、以下のような異常は検出できません。
- 心臓の形の異常:心臓の構造に問題がある場合、NIPTでは見つかりません。
- 脳や脊髄の異常:無脳症や二分脊椎などの神経系の異常も、NIPTでは検出できません。
- お腹の壁の異常:腹壁破裂や臍帯ヘルニアなどの異常も対象外です。
- 腎臓や尿路の異常:腎臓の形成不全や尿路の閉塞なども、NIPTでは分かりません。
- その他の構造的な異常:口唇口蓋裂、手足の形成異常など、多くの構造的な異常はNIPTの対象外です。
- 小さな染色体の異常(微小欠失・重複):NIPTでは検出できない小さな染色体の変化もあります。
超音波検査(胎児ドック)の役割
超音波検査は、NIPTとは全く異なる方法で赤ちゃんの状態を確認します。赤ちゃんの体の形や臓器の発育を直接観察することで、NIPTでは見つけられない多くの異常を発見することができます。
妊娠11〜14週頃の早期の超音波検査(初期ドック)では、無脳症やお腹の壁の異常など、一部の重大な異常をほぼ100%近く見つけることができます。また、妊娠18〜20週頃の詳しい超音波検査(中期ドック)では、心臓・脳・腎臓・骨格など、赤ちゃんの全身を詳しく観察します。
NIPTと超音波検査は「補い合う」関係
NIPTと超音波検査は、どちらか一方だけで十分というものではありません。それぞれが異なる種類の異常を見つけることができる、補い合う関係にあります。
| 検査 | 主に見つけられるもの |
|---|---|
| NIPT(採血) | 特定の染色体異常(主に3つのトリソミー)を高い精度で検出 |
| 超音波検査(胎児ドック) | 赤ちゃんの体の形・臓器の構造異常を直接観察して検出 |
ふたつの検査をどう組み合わせるかは、NIPTと初期ドックの違いもあわせてご覧ください。
大切なのは「知ること」と「準備すること」
超音波検査を受けることは、不安を増やすためではありません。もし何か見つかった場合でも、早く知ることで、適切な準備や対応ができるというメリットがあります。
- 出産する病院を、専門的な治療ができる施設に変更できる
- 生まれてすぐに必要な治療の準備ができる
- ご家族が心の準備をする時間が持てる
- 専門家からのサポートを早めに受けられる
まとめ
NIPTが陰性という結果は、もちろん良いニュースです。しかし、それだけで「すべて安心」というわけではありません。
超音波検査を受けることで、より広い範囲で赤ちゃんの健康を確認することができます。NIPTと超音波検査の両方を組み合わせることが、赤ちゃんとお母さんにとって、より安心できる妊娠生活につながります。
すでにNIPTを受け、これから体の構造も確認したいという方は、早期胎児ドック+NIPTもあわせてご覧ください。
ご不明な点があれば、いつでも担当の医師や助産師にご相談ください。
参考文献
- Gebremeskel Aragie T, Seyoum Gedion G. Proportion of Chromosomal Disorders and Their Patterns Among Births With Congenital Anomalies in Africa: A Systematic Review and Meta-Analyses. TheScientificWorldJournal. 2022.
- Demirhan O, Tunç E. Cytogenetic Status of Patients With Congenital Malformations or Suspected Chromosomal Abnormalities in Turkey: A Comprehensive Cytogenetic Survey of 11,420 Patients. Chromosoma. 2022.
- Norton ME, Biggio JR, Kuller JA, Blackwell SC. The Role of Ultrasound in Women Who Undergo Cell-Free DNA Screening. American Journal of Obstetrics and Gynecology. 2017.
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- Buijtendijk MF, Bet BB, Leeflang MM, et al. Diagnostic Accuracy of Ultrasound Screening for Fetal Structural Abnormalities During the First and Second Trimester of Pregnancy in Low-Risk and Unselected Populations. The Cochrane Database of Systematic Reviews. 2024.
- Scharf A. First Trimester Screening With Biochemical Markers and Ultrasound in Relation to Non-Invasive Prenatal Testing (NIPT). Journal of Perinatal Medicine. 2021.
本コラムは、出生前診断について理解を深めていただくための一般的な情報提供を目的としています。検査の適応や結果の解釈は、妊娠週数やお一人ひとりの状況によって異なります。具体的なご相談は、外来で医師・専門スタッフへお気軽にお声がけください。
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