羊水検査で「染色体は正常でした」と伝えられると、大きな安心につながります。ただ、それですべての心配がなくなったわけではないことも知っておいていただきたい点です。このコラムでは、羊水検査で分かること・分からないことを整理し、なぜそのあとも超音波が必要なのかをご説明します。
羊水検査で「わかること」
羊水検査は、赤ちゃんの細胞を直接調べる確定的検査です。主に次のことが、非常に高い信頼性で分かります。
- 染色体の数の異常(21トリソミー=ダウン症候群、18トリソミー、13トリソミーなど)
- 性染色体の数の変化
- 染色体の大きな構造の変化(欠失・重複・転座など)
- (追加検査を行えば)染色体マイクロアレイで、より細かい染色体の過不足
つまり、「染色体レベルの問題」については、確定的に評価できる検査です。
羊水検査で「わからないこと」
一方で、羊水検査(染色体検査)では分からないこともあります。
- 体の構造の異常:心臓、脳、腎臓、消化管、手足、顔などの形の異常は、染色体が正常でも起こりえます。
- 多くの単一遺伝子疾患:特定の遺伝子だけに原因がある病気は、通常の染色体検査の対象外です。
- 妊娠経過のなかで現れてくる所見:発育の変化などは、時間の経過とともに超音波で分かってくることがあります。
染色体の病気は、生まれつきの病気の一部です。染色体が正常でも、体の構造の異常はそれとは別に起こりうるのです。
だからこそ、超音波が必要です
体の構造の異常は、染色体検査ではなく超音波でしか評価できません。そのため、羊水検査で染色体正常が確認されても、
- 20週前後の詳細超音波検査(中期ドック)(中期の胎児形態スクリーニング)
- 必要に応じた胎児の心臓の専門的な評価(胎児の心臓スクリーニング)
は引き続き受けていただくことをおすすめします。染色体は羊水検査で、体の構造は超音波で——と、それぞれ得意な方法で確認していくことが大切です。
「染色体正常=すべて安心」ではないが、過度に不安がる必要もない
こう聞くと不安に感じられるかもしれませんが、構造の異常はけっして多いものではなく、多くの赤ちゃんは元気に育ちます。大切なのは、「染色体が正常=100%何もない」と思い込まず、また逆に必要以上に怖がりすぎず、検査の役割の違いを正しく知っておくことです。
羊水検査は、確定診断という大きな安心をもたらす検査です。そのうえで、超音波という別の目でも見守っていく——この組み合わせが、赤ちゃんをより丁寧に見守ることにつながります。
まとめ
- 羊水検査は染色体の数・大きな構造を確定的に調べる、信頼性の高い検査です。
- ただし、体の構造の異常や多くの単一遺伝子疾患は、染色体検査では分かりません。
- そのため「染色体正常」でも、20週前後の詳細超音波は引き続き必要です。
- 染色体は羊水検査、構造は超音波と、役割の違いを知って見守っていきましょう。
羊水検査そのものについては羊水検査・絨毛検査とはもあわせてご覧ください。ご不明な点は、どうぞお気軽にご相談ください。
参考文献
- Rose NC, Kaimal AJ, Dugoff L, Norton ME. Screening for Fetal Chromosomal Abnormalities: ACOG Practice Bulletin, Number 226. Obstetrics & Gynecology. 2020;136(4):e48-e69.
- Wapner RJ, Martin CL, Levy B, et al. Chromosomal Microarray versus Karyotyping for Prenatal Diagnosis. The New England Journal of Medicine. 2012;367(23):2175-2184.
本コラムは、出生前診断について理解を深めていただくための一般的な情報提供を目的としています。検査の適応や結果の解釈は、妊娠週数やお一人ひとりの状況によって異なります。具体的なご相談は、外来で医師・専門スタッフへお気軽にお声がけください。
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