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ひろつぐ出生前診断クリニック

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NIPT陰性の妊婦さんの妊娠初期心臓スクリーニング:間接マーカーより、4CV・流出路・3VTVの直接評価を

医療関係者向け

本記事は医療関係者(医師・超音波検査技師など)向けの技術情報です。 NIPT陰性・低リスクの妊婦さんに対する、妊娠初期(11〜14週)の胎児心臓スクリーニングで、当院が何を優先しているかをまとめています。妊婦さん向けの解説はNIPTが陰性でも、赤ちゃんの心臓は別に確認ををご覧ください。

日頃より、妊婦さんのご紹介や情報共有でお世話になっております。

NIPTを受けて陰性の結果が出た妊婦さんが、その後に妊娠初期のスキャンを受けに来られる機会が増えてきました。そのとき、11〜14週の心臓の評価で何を一番大事にするのか。ここでは、当院がいま考えている優先順位を、根拠となった文献とあわせてお伝えします。

NIPT陰性例で、妊娠初期スキャンの役割はどう変わるか

NIPTで21・18・13トリソミーが陰性とわかっている場合、染色体異常のリスク評価を主な目的としたNT計測の意義は、相対的に低くなると考えています。

一方で、構造異常、とくに先天性心疾患を早く見つけるための、くわしい解剖学的評価の重要性はむしろ高まっていると感じています。

そこで当院では、妊娠初期の心臓スクリーニングの中心を、次の4つの断面をslow-flow設定のカラードプラで系統的に見る、直接的な構造評価に置いています。

  • 4腔断面(4CV)
  • 左室流出路(LVOT)
  • 右室流出路(RVOT)
  • 3血管気管断面(3VTV)

当院では、このslow-flowのカラードプラにSlowflowHDを用いています(経腹的な観察の取り組みは院長の研究の紹介にまとめています)。

三尖弁逆流・静脈管逆流a波の位置づけ

三尖弁逆流(TR)と静脈管(DV)の逆流a波は、もともとNTと組み合わせて、染色体異常のリスク計算に使われてきた指標です。

ただ、正常NT・低リスクの集団で、先天性心疾患のスクリーニングとして使うには、性能が限られるというのが、現時点での私の理解です。

  • 静脈管:診断精度を検討したメタ解析では、NT正常例での静脈管の評価は感度19%、特異度96%、AUC 0.23と不良でした。三尖弁逆流についても、低リスク集団での明確なエビデンスは確立されていないとされています(Savoia ら、2023年)。
  • 三尖弁逆流:心奇形のない正常核型の胎児でも1%程度に三尖弁逆流が見られる一方、重症の心奇形がある胎児でも、陽性になるのは約3分の1にとどまると報告されています(Pereira ら、2011年)。

このため、低リスクの妊婦さんで、これらを一次スクリーニングの柱にすると、偽陽性による不要な不安や精査が増える可能性があると考えています。

直接的な構造評価はどこまで有用か

妊娠初期(11〜14週)の超音波による心疾患検出を検討したメタ解析では、ハイリスクではない集団で、観察の範囲を広げるほど感度がはっきり上がっていました(Karim ら、2022年)。

観察のプロトコル感度(統合値)
決まったプロトコルなし13.5%
4CVのみ33.0%
4CV+流出路断面57.5%
4CV+流出路断面+カラードプラ80.0%

同じ解析で、カラードプラの有無では42.5%→78.4%、流出路断面の有無では33.8%→75.4%と、いずれも有意な差でした。

個別の研究では、11〜13週に4CVと3VTVをカラードプラで評価する簡便なプロトコルで、**感度88.6%、特異度100%**と報告されています(Wiechec ら、2015年)。単一施設の前向き研究で、対象は1,084例、心疾患は35例(うち16例は染色体異常を伴う)です。Savoia らのメタ解析の考察でも、非選択集団での成績として紹介されています。

間接的なサインから心疾患を推測するより、心臓のつくりそのものを見に行くほうが、低リスクの方には合っている、と考えている理由です。

間接マーカーを、今も大事にしている場面

間接マーカーが役に立たない、ということではありません。

NTが3.0〜3.5mm以上と高い場合には、静脈管の逆流a波や有意な三尖弁逆流は、染色体異常と心疾患のどちらのリスクを見直すうえでも助けになり、紹介を判断する材料になり得ます(ACR Appropriateness Criteria、2020年)。

ですので、NT高値の例や、構造の評価がはっきりしない例では、間接マーカーの評価と、専門施設へのご紹介を、これまでどおりご検討いただければと思います。迷う所見があれば、抱え込まずにご相談いただけるとありがたいです。

妊娠初期スキャンの限界と、中期スキャンの位置づけ

妊娠初期の心臓の評価には、中期と比べて解像度や胎児の向きの制約があります。大動脈縮窄や左心低形成症候群などは、妊娠が進むにつれて所見がはっきりしてくることがあります。

Fetal Heart Societyの専門家声明でも、早期の胎児心エコーは有用な補助的評価である一方、18〜22週の標準的な中期構造スキャンの代わりにはならないと述べられています(Geiger ら、2025年)。

妊娠初期のスキャンで異常が見られなかった方にも、標準的な中期の構造スキャンは引き続きご案内いただければと思います。

まとめ

NIPT陰性・低リスクの例では、三尖弁逆流や静脈管逆流a波といった間接マーカーに頼るより、4CV・LVOT・RVOT・3VTVによる直接的な心臓の構造評価を優先するのが、現時点のエビデンスに合っていると考えています。

NT高値の例や、構造の評価に不明瞭な点がある例では、これまでどおり間接マーカーの評価と専門施設へのご紹介をご検討ください。

これは私たちのやり方であって、唯一の正解ではありません。施設ごとの体制や妊婦さんの背景によって、最適な運用は変わると思います。ご意見やご質問があれば、ぜひお聞かせください。ご紹介やお問い合わせについては医療関係者の方へをご覧ください。

参考文献

  1. Savoia F, Scala C, Coppola M, et al. The diagnostic performance of the ductus venosus for the detection of cardiac defects in the first trimester: a systematic review and diagnostic test accuracy meta-analysis. Arch Gynecol Obstet. 2023;308(2):435-451. doi:10.1007/s00404-022-06812-w
  2. Pereira S, Ganapathy R, Syngelaki A, Maiz N, Nicolaides KH. Contribution of fetal tricuspid regurgitation in first-trimester screening for major cardiac defects. Obstet Gynecol. 2011;117(6):1384-1391. doi:10.1097/AOG.0b013e31821aa720
  3. Karim JN, Bradburn E, Roberts N, Papageorghiou AT. First-trimester ultrasound detection of fetal heart anomalies: systematic review and meta-analysis. Ultrasound Obstet Gynecol. 2022;59(1):11-25. doi:10.1002/uog.23740
  4. Wiechec M, Knafel A, Nocun A. Prenatal detection of congenital heart defects at the 11- to 13-week scan using a simple color Doppler protocol including the 4-chamber and 3-vessel and trachea views. J Ultrasound Med. 2015;34(4):585-594. doi:10.7863/ultra.34.4.585
  5. Expert Panel on Women’s Imaging; Simpson L, Maturen KE, et al. ACR Appropriateness Criteria® Nuchal Translucency Evaluation at 11 to 14 Weeks of Gestation. J Am Coll Radiol. 2020;17(11S):S447-S458. doi:10.1016/j.jacr.2020.09.007
  6. Geiger MK, McBrien A, Hornberger LK, et al. Performance of Early Fetal Echocardiography: An Expert Statement from the Fetal Heart Society. J Am Soc Echocardiogr. 2026;39(2):188-205(電子版 2025年10月). doi:10.1016/j.echo.2025.09.020

本コラムは、出生前診断について理解を深めていただくための一般的な情報提供を目的としています。検査の適応や結果の解釈は、妊娠週数やお一人ひとりの状況によって異なります。具体的なご相談は、外来で医師・専門スタッフへお気軽にお声がけください。

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最終更新日:2026年10月4日

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