本記事は医療関係者(医師・超音波検査技師など)向けの技術情報です。 円錐動脈異常のスクリーニングでの拾い方についてまとめています。妊婦さん向けの解説は胎児の心臓スクリーニングをご覧ください。
胎児心臓スクリーニングというと、四腔断面(4CV)がきれいに見えれば一安心、という感覚になりがちです。私自身も、始めた頃はそうでした。
ただ実際には、4CVが正常に見える先天性心疾患は少なくありません。ファロー四徴症、総動脈幹症、心室中隔欠損を伴わない両大血管右室起始、大血管転位などがその代表で、これらはまとめて円錐動脈(conotruncal)異常と呼ばれます。
「流出路まで全部きちんと評価しましょう」と言われても、日常の妊婦健診のなかでそこまで手が回らない、というのが現実だと思います。そこでこの記事では、確認する点をできるだけ少なくするという方向で整理してみました。
なぜ4CVだけでは足りないのか
4CVは心房・心室のサイズや房室弁の評価には優れた断面ですが、大血管の位置関係や太さの異常までは評価できません。構造上、そこは映っていないからです。
報告されている検出感度は、おおよそ次のように整理されています。
| 評価する断面 | 重症心疾患の検出感度 |
|---|---|
| 4CVのみ | 約50% |
| +流出路断面 | 60〜80% |
| +三血管気管断面(3VT view) | 85〜90% |
逆に言えば、円錐動脈異常の多くは4CVを見ているだけでは残ってしまうということになります。これは技量の問題というより、断面の性質の問題だと考えています。
多くに共通する所見:「大動脈の騎乗」
円錐動脈異常は解剖学的には多彩で、疾患名を並べられると身構えてしまいます。ただ、実は共通点があります。
ファロー四徴症、心室中隔欠損を伴う肺動脈閉鎖、総動脈幹症、両大血管右室起始の多くは、いずれも大動脈(または総動脈幹)が心室中隔欠損の上に「騎乗」しているという所見を共有しています。
つまり、左室流出路断面(five-chamber view)で、大動脈が中隔にまたがって起始していないかを見る——この一点だけで、これらの疾患をまとめて拾い上げられる可能性があります。疾患ごとの鑑別は専門施設に任せるとして、スクリーニングの段階では「まとめて引っかける」ほうが現実的ではないかと感じています。
矢印=連続性を確認する場所。心室中隔と大動脈前壁が、ここで途切れずに一直線につながっているかを見ます。高さは大動脈弁の心室側(弁尖のすぐ下)に固定するのがポイントです。ここで前壁のラインが途切れていたり、大動脈基部が右室側へずれてまたがっていたりする場合に、円錐動脈異常を疑うことになります。
実際に見るところ
左室流出路の長軸断面を出したうえで、確認するのは次の3点だけです。
- 大動脈基部が心室中隔の真上にあるか — 右室側にずれてまたがっていないか
- 心室中隔欠損がないか
- 大動脈と肺動脈のサイズが著しく非対称でないか
この3つであれば、スクリーニングの流れのなかでも数十秒で確認できると思います。断面の出し方については流出路描出のためのSweep法とRotational(DeVore)法にまとめました。とくに心尖部が3時/9時の胎位では距離分解能が活き、中隔と大動脈前壁の連続性がいちばん明瞭に見えます。
落とし穴:連続性を見る「高さ」がずれると、正常でも異常に見えます
ここは、私がいちばんお伝えしたいところです。
「中隔と大動脈前壁の連続性を見る」と言葉にすると簡単なのですが、実際にはどの高さで見るかで結論が変わってしまいます。そして、この見え方は丁寧に流出路を追っている方ほど出会うものです。
見る高さは、大動脈弁の心室側に固定する
連続性を評価する高さは、大動脈弁の心室側、弁尖のすぐ下です。図の矢印の位置がそこにあたります。ここで中隔と大動脈前壁が一直線につながっていれば、その断面では連続性ありと判断します。
大動脈弁より頭側は、そもそも大動脈の壁ではない
問題は、そこから少し頭側(上流)へ進んだときです。
大動脈基部を出てすぐ上では、右室流出路から出た肺動脈が、前方から左方へ大動脈にかぶさるように回り込んで走行します。そのため、この高さで「前壁の連続性」を評価しようとすると、実際に見ているのは大動脈の壁ではなく肺動脈の壁ということになります。
肺動脈が前を横切ったところで前壁のラインが途切れて見えるのは、正常な走行そのものです。ところがこれが「中隔との連続が途切れている」と読めてしまうため、実際には正常であるにもかかわらず、円錐動脈中隔欠損(conotruncal VSD)や大動脈騎乗を疑ってしまう——というのが、非常に多い落とし穴です。
つまり、「連続性を見る場所は大動脈弁レベルの心室側」という一点だけ意識しておけば、正常な肺動脈の走行を異常所見と読んでしまうことは避けられます。
迷ったときに足す一手
とはいえ、実際の画面では迷うことがあります。そのときは、次のように扱うのが安全だと考えています。
- 本当に騎乗があるかどうかは、心室中隔欠損を挟んで前壁が明らかに前方(または後方)へオフセットしているかで判断する
- 迷う場合は、心室中隔欠損の有無を短軸断面やカラードプラでも確認する
- 単一断面だけで結論を出さない
「途切れて見えた」だけで結論を出さず、高さを変えて追い直す、あるいは別の断面を足す。それだけで、多くは整理がつくように思います。
なお、この所見で紹介いただくこと自体は、まったく問題ないと考えています。迷う所見を抱え込まずに送っていただけるほうが、私たちとしてはありがたいです。結果として正常だったとしても、それは「見逃さないための閾値が適切だった」ということだと受け止めています。
「騎乗大動脈」では拾えない疾患:大血管転位
ここが少しやっかいなところです。
唯一の例外が**大血管転位(TGA)**です。TGAは心室中隔欠損を伴わない限り大動脈の騎乗を認めず、4CVも流出路の形態も一見正常に見えることが多いため、いわゆる「騎乗大動脈サイン」では検出できません。
TGAを見つけるには、三血管気管断面で、大血管の交差(クロス)がなく2本が平行に走行していないかを確認する必要があります。正常であれば必ず交差する——という点だけ頭に置いておくと、平行に見えたときに違和感を持てるように思います。大血管の立体交差については最初に覚える解剖は、この5つで足りますでも触れました。
TGAは出生後早期にチアノーゼが急速に進行し、緊急のバルーン心房中隔裂開術を要することもあります。そのため、心臓外科・小児循環器の対応が可能な施設での分娩計画がとくに重要になります。
なぜ出生前に見つけておきたいのか
円錐動脈異常やTGAは、動脈管に依存した循環であることが多い疾患群です。出生前に診断できていれば、
- 分娩施設をあらかじめ選んでおける
- プロスタグランジン投与の準備ができる
- 新生児科・小児循環器科と事前に連携できる
といった対応が可能になり、生後の血行動態の破綻を未然に防いで、周術期の臓器障害やアシドーシスを軽減できることが示されています。
見つけたあとに自分で何とかしなければならない、という話ではありません。気づいて、つなぐところまでが妊婦健診の役割だと考えています。そう思うと、少し気が楽になるのではないでしょうか。
まとめ
- 4CVが正常でも円錐動脈異常は否定できません
- 左室流出路断面で「大動脈の騎乗」を探すだけで、ファロー四徴症・肺動脈閉鎖+VSD・総動脈幹症・両大血管右室起始など多くの円錐動脈異常をまとめて拾える可能性があります
- ただし、連続性を見る高さは大動脈弁の心室側に固定します。大動脈弁より頭側で前壁が途切れて見えるのは、正常な肺動脈の巻き込み走行であることが多く、これを連続性欠如と読まないようにします
- 騎乗大動脈では拾えない代表例がTGAで、三血管気管断面での大血管の走行(交差の有無)の確認が別途必要です
もちろん、これは私なりの整理のしかたであって、唯一の正解というわけではありません。ただ、「全部を評価する」より「共通所見を一つ探す」と考えたほうが、続けやすいのではないかと感じています。
判断に迷う所見がありましたら、医療関係者の方へのページからお気軽にご連絡ください。当院の初期からの心臓評価の考え方は初期からの心臓スクリーニングにまとめています。
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本コラムは、出生前診断について理解を深めていただくための一般的な情報提供を目的としています。検査の適応や結果の解釈は、妊娠週数やお一人ひとりの状況によって異なります。具体的なご相談は、外来で医師・専門スタッフへお気軽にお声がけください。
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