本記事は医療関係者(医師・超音波検査技師など)向けの技術情報です。 胎児心スクリーニングを始めた段階での解剖のとらえ方をまとめています。妊婦さん向けの解説は胎児の心臓スクリーニングをご覧ください。
「4CVは出せるけれど、そこから先が続かない」「断面の名前と画像がなかなか結びつかない」——胎児心スクリーニングを始めた先生から、よくうかがう悩みです。
私自身もそうでしたが、この段階でつまずく原因の多くは、断面を一枚ずつ画像として覚えようとしていることにあるように思います。心臓は立体で、超音波はその立体を切った断面を見ているだけです。順序を逆にすると、覚える量が一気に増えてしまいます。
そこで、始める段階で頭に入れておくとよい解剖を、思い切って5つに絞ってみました。網羅的な知識は後からで間に合います。
まず、この5つだけ
左=四腔断面に相当する高さで切開した心臓。右室・右房・左室・左房の4つの部屋と房室弁が見える。左室から大動脈(Ao)、右室から肺動脈(PA)が起こり、両者が立体的に交差する。
右=同じ心臓を胎児の上から見たもの。大血管が交差しながら走行する様子がわかる。
1. 心臓には4つの部屋がある。4CVは、その4部屋を一度に見る断面である。
2. 左室から大動脈が、右室から肺動脈が出る。
3. 正常では、大動脈と肺動脈は立体的に交差する。
4. 右室から肺動脈までには右室流出路という少し長い通路があるため、肺動脈は大動脈より頭側で見えてくる。
5. 最終的に、大動脈弓と動脈管はともに下行大動脈へ向かう。
図の左右を見比べていただくと、この5点が一つの立体の中でつながっていることが確認できると思います。
この5点を持ってスイープしてみる
上の5点を頭に入れたうえで、プローブを頭側へ動かしてみてください。
4CV → LVOT → RVOT / 3VV → 3VTV
ここで大切なのは、それぞれを別々の断面として覚えないことです。5番の「大動脈弓と動脈管がともに下行大動脈へ向かう」まで頭に入っていると、3VTVで見ているV字が何の合流点なのかが、暗記ではなく必然として理解できます。
4番を知っていると、「肺動脈が先に見えるのはなぜか」も納得できます。右室流出路のぶんだけ肺動脈弁の位置が頭側にあるので、スイープの順序としてそうなる、というだけのことです。
この状態で断面を追っていくと、それまでバラバラに見えていた画像が、一つの立体的な心臓を下から上へ追いかけているだけだと見えてくるはずです。断面が「増える」のではなく、同じ心臓の「どの高さを見ているか」が変わっているだけだと感じられれば、その先はかなり楽になります。
順序を逆にしないほうがよい理由
心臓エコーは、断面から暗記し始めると難しくなります。断面の枚数だけ覚えることが増えるうえ、少し胎位が変われば見え方も変わるため、覚えたパターンから外れた瞬間に手が止まってしまうからです。
**先に簡単な立体模型を頭の中に作り、その模型を超音波で少しずつ切っていく。**この順序にしておくと、胎位が変わっても「いま、この立体をこの向きで切っている」と考え直すことができます。
もちろん、これは私のやり方であって、唯一の正解ということではありません。ただ、胎児心エコーを嫌いにならずに続けるという意味では、遠回りに見えてこの順序が結局は近道ではないかと感じています。
次のステップ
立体像が頭に入ったら、次は実際にその断面を安定して出す手技の話になります。プローブを傾けるSweep法と、心尖部を軸に回すRotational(DeVore)法の使い分けについては、胎児心スクリーニング:流出路描出のためのSweep法とRotational(DeVore)法にまとめています。
四腔断面だけでは重大な心疾患の50%以上を見逃しうる一方、流出路の評価を加えると検出感度は60〜80%に上がると報告されています。まずは立体像を作るところから、無理のない範囲で進めていただければと思います。
ご質問やご相談がありましたら、医療関係者の方へのページからお気軽にお問い合わせください。
本コラムは、出生前診断について理解を深めていただくための一般的な情報提供を目的としています。検査の適応や結果の解釈は、妊娠週数やお一人ひとりの状況によって異なります。具体的なご相談は、外来で医師・専門スタッフへお気軽にお声がけください。
この記事に関連する検査
検査メニュー検査はすべて大阪・南森町の当院(南森町駅すぐ)での対面診療です。結果のご説明はオンラインにも対応しています。